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寺家ふるさと村と殿ヶ谷戸庭園

コラボ 001


ムラサキの葉


シライトソウ


 知人Sさんの「短詩と写真のコラボ展」を観るため、井の頭線と田園都市線を乗り継いで横浜青葉区内の寺家ふるさと村へ向かう。同行は地元野鳥の会の佐々木会長。久しぶりに青葉台駅に降りて、その変貌振りに驚く。ひっきりなしにバスが発着して、都心を凌ぐ賑わいである。ところが20分待っても30分経っても寺家行きのバスが来ない。時刻表を調べると1時間に1本で、さっき出たばかりのようだ。ぶらぶら歩いて行きたいが、和服で雪駄ではそうもいかない。タクシーにする。佐々木さんが「テライエふるさと村へ」と言うと運転手が「えっ?」と怪訝な顔をする。「違うでしょ。テラヤ」と僕。が、運転手は首をかしげたまま。ややあって、「それ、ジケふるさと村じゃあないですか」…二人とも寺家をジケと読むとは知らなかった。あとで館内の資料を読むと、寺家は江戸時代、直参旗本の領地だった由緒ある地域らしい。
 広大な青葉台団地を横目に10分ほど走ると美しいケヤキ並木に出る。樹齢30年は超えているだろう。白鵬の太腿くらいある幹が煌くような若葉を付けている。並木が切れるころ正面に里山が見えてきた。里山は単独ではなく、寺家集落を守る防壁のように連なっており、その真ん中に田植えを終えたばかりの水田が広がっている。「いいねぇ」…期せずして二人の口から溜息が洩れる。
 
 展示会場は四季の家の正面、玄関を入って直ぐの場所。あいにくSさんは不在だった。受付で記帳したあとゆっくりと18点の作品を見て回る。何れも寺家ふるさと村の行事や田園風景をテーマにしたもので、家族散れなどが熱心に見入っていた。Sさんの作品はホームページで欠かさず拝見しているが、A4版に拡大した作品は、さすがに迫力がある。氏はIT産業のご出身でパソコンや写真はお手のもの。それに簡潔で温かな短詩が添えられ、春の日差しのようにほんわかと人間味溢れる作品に仕上がっている。
 コラボ展を見たあと、生きたドジョウや蜂の巣などの展示物や郷土史資料を見て回る。此処が旗本の直轄領であることも、この資料で知った。興味を引いたのは傘連判状という古文書。これは過酷な年貢の取立てに抗議して年貢不払いを盟約した連判状だが、最後の連判が横並びでなく、ちょうど傘を広げたように円形に書かれている。横並びだと誰が首謀者か直ぐ判るが、このようにすれば判らないというわけだ。私も実物を見るのは初めてで、図らずも良い勉強が出来た。館を出て周辺の水田や里山を見て歩く。田んぼからはカエルの声が聞かれ、里山はヤマボウシやウノハナが満開であった。

 帰途、時間が余ったので国分寺の殿ヶ谷戸庭園に立ち寄る。既に藤や花木の花は終わり、苑内の緑陰にはムラサキ、シライトソウ、アマドコロ、シラン、ミヤコワスレなどが可憐な花をつけていた。エントランスに沿って鉢植えのボタンが並んでいる。これは前回訪れたときと同じ。寿命の長い花だ。牧野富太郎博士の『植物知識』によると、古名をハツカグサ(二十日草)と言うそうだ。これは藤原忠道の「咲きしより散り果つるまで見しほどに花のもとにて廿日へにけり」に拠るものという。花季の長いのも肯ける。
 ムラサキの花は名前に反して写真のように白い。根から紫の染料を採ったのが名前の由来で、『万葉集』に「託馬野(つまぬ)に生ふる紫草衣(むらさききぬ)に染め、いまだ着ずして色に出でけり」という歌があって、古くから紫草を染料に使っていたことが判る。『万葉集』では大海人皇子が「紫の匂へる妹(いも)を憎くあらば人妻ゆゑに我れ恋ひまやも」と、ムラサキに託して苦しい恋を詠っている。また『古今和歌集』にも「紫のひともとゆえに 武蔵野の草はみながら あわれとぞ見ゆ」の歌も見える。
 その脇に4枚輪生したハート型の葉を持つ蔓草が群生している。花は未だ付いていないがアカネと見られる。これも古代から染料に使われた。額田王に「あかねさす紫野ゆき標野(しめの)ゆき野守は見ずや君が袖振る」という有名な歌がある。また清少納言も「茜さす日に向かいても思い出よ都は晴れぬながめすらんと」と詠っている。
 シライトソウはアップに写すと美しいが、実際は木陰に咲く地味で目立たない花である。花が白糸を思わせることが名前の由来。シランは紫蘭だろうが詳しいことはシラン。
 庭内の紅葉亭で表千家の茶会が開かれていた。一服頂戴して帰る。既に斜陽、雨含んだ風が吹き始めていた。。
             
        偶成(五言 亦 七言)
     
     緑陰飛鳥影  緑陰ニ飛鳥ノ影
     苔砌映斜陽  苔砌 斜陽ニ映ズ
     啜茗香烟散  茗ヲ啜レバ香烟散ジ 
     庭前新緑肥  庭前ニ新緑肥ユ

【大意】緑陰に鳥たちが囀り、汀の苔が夕日に映えて美しい。茶を喫すれば芳香が漂い、庭前の新緑は濃い。

     新緑薫風渡茶亭  新緑ノ薫風 茶亭ヲ渡ル
     暖気含雨潤階庭  暖気雨ヲ含ンデ階庭ヲ潤ス
     野草処処尤堪楽  野草処処 最モ楽シムニ堪エタリ
     却使人悲首夏青  却って人をして首夏ノ青キヲ悲シマシム

【大意】新緑の薫風が茶亭を吹きすぎていく。暖気を含んだ雨が坂の庭を濡らし、あちこちに咲いた山野草が目を楽しませてくれる。が、人の心は却って初夏の緑が深まっていくのを悲しむ。

       (写真:上からコラボ展の佐々木氏、ムラサキの葉、シライトソウ)

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by 杜の小径  at 19:29 |  日記 |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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