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季節のことばーゲンゴロウ(源五郎)ー

ゲンゴロウ


ゲンゴロウブナ


 今どきの子どもにゲンゴロウの話をしても、「どこのおじさん?」と聞き直されるだろう。戦前までは田んぼや沼にうじゃうじゃ泳いでいた、日本では最大の水生甲虫である。私は姿がゴキブリに似ているので好きではなかったが、友だちのなかには空き瓶に1匹ずつ入れて飼うやつもいた。なぜ1匹ずつかというと、一緒にすると共食いするからである。そのゲンゴロウも農薬散布の影響で、準絶滅危惧種に指定されるほど激減してしまった。
 
 源五郎は夏の季語である。源五郎地底を匐へり天台寺」(いし夫)、「宇佐八幡池の濁りの源五郎」(公司)などの句があるが語呂が悪いせいか、あまり名吟にはお目にかからない。柊花という女流に「源五郎空中飛翔こころみぬ」という作品があるが、これは後述の名前の謂れに因んだものか、源五郎鮒を指しているのかもしれない。実は季語の源五郎は鮒と虫の両方に遣われ、読み手は前後の言葉から鮒か虫かを推量するのだが、この句では判断が難しい。
 ゲンゴロウの語源については二説がある。一つは民話。むかし、貧しいが親孝行な少年がいた。自分は木の実を食べながら病気の母を看病していた。ある日、木の精霊が少年を憐れみ打ち出の木槌をくれる。それは人を助けるために振ればいくらでも金を産むが、欲のために振れば体がだんだん小さくなるという不思議な木槌だった。少年はそれで小判を振り出し、高価な薬を買って親の病気を治した。この噂が評判になると強欲な代官の源五郎が木槌を取り上げてしまった。ある日、代官の姿が見えなくなった。怪しんだ村人が代官屋敷に行ってみると小判の山の下から一匹の虫が這い出してきた。我欲のために木槌を使った代官は体がだんだん小さくなり、遂に虫になってしまったのだ。それ以来、村人はこの虫を源五郎と呼ぶようになったとさ。
 もう一つ、この虫が琵琶湖に棲む源五郎鮒の幼魚を好んで食べるからだという説もある。では源五郎鮒の語源は? …これも民話が謂れとなっている。源五郎という男が天狗に貰った豆を蒔くと、天まで届く大木になる。男はそれを登って天に行き、雷と出合って雨を降らせる手伝いなどをする。ところが雨を降らせ過ぎてできた琵琶湖に落ちで鮒に変身してしまう。これが源五郎鮒というわけ。

 この腹を割いて塩漬けにしたものに飯を詰め、重石で圧しながら熟成させた熟鮨(なれずし)が鮒鮨と呼ばれる珍味である。ところが虫のゲンゴロウを食べる地方がある。奇食珍味の国と言えば、足のあるものなら机以外は何でも食べるといわれる信州であろう。馬刺し、蜂の子、イナゴ、サナギ、ザザムシ、そしてゲンゴロウ。足は無いがタニシの壺焼き、饅頭の天ぷらまである。私は信州が好きで、これらの食材も殆ど口にしているがゲンゴロウだけは食べたことがない。後学のために古老に食べ方を聞いたところ、トウガラシで炒めて食べるとのことだった。羽をむしらずに丸のまま炒めるらしい。やはり羽は食べられないようで、羽の下になったクリーミーな部分だけを食べるとのこと。固い殻に覆われたエビやカニなど甲殻類と似た姿をしているのだから、味も似ているのかもしれない。しかし私にはカニやエビよりもゴキブリが連想される。どなたか勇気のある方は試食して味をご教示して欲しい。

       (写真:上からゲンゴロウ、ゲンゴロウブナ)
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by 杜の小径  at 09:01 |  日記 |  comment (1)  |   |  page top ↑
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