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トマト

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  トマト生(あ)ると一行記す日記かな (杜)

 近ごろ野菜が美味しくない。たとえばトマト。フルーツトマトとか、イチゴの形をしたミニトマトなどが出回っている。僕にとって、あれはトマトではない。研ぎの悪い包丁など撥ね返しそうな硬い皮、ガブリと噛み付くと青臭い香りが迸るヤツ。それがトマトだ。が、今どきそんなトマトなど、どこを探しても無い。トマトの蔕(ヘタ)を指で擂り潰し、幽かな青臭さに臭覚の郷愁を慰める日々であった。
 ある日、コープでミニトマトの種を見つけて、空き箱に蒔いてみた。10日過ぎても半月経っても発芽しない。もう1袋買ってきて蒔いた。5月になって二つの箱から、にょきにょきと芽が出てきた。春寒が続いて発芽が遅れたらしい。一旦顔を出した芽は成長が速い。空き鉢を集め、足りない分は買い足す。3年前まで菜園をやっていたからノウハウはある。苦土石灰で中和した土に腐葉土、牛糞、骨粉を混ぜて本植えする。10日も経つとヴェランダは完全にトマトのジャングルと化した。このままでは日照も侭ならない。家政婦さん夫婦に三拝九拝して数鉢を引き取って貰い、近くの友人にもトマトの「里親」をお願いした。残った苗は15本。ところが苗はどんどん生長する。せっかく2度咲きしてくれたシクラメン、花の終わった野生ラン、山野草などを物干場や室内に移してスペースをつくる。

 他の花たちを追い出したトマトくん、少しハネを伸ばし過ぎたようだ。節間が空き過ぎて徒長気味だ。肥料を遣りすぎたらしい。思い切って下葉を剪定して腋芽を伸ばす。これが成功して6月に入って花を付け始めた。
 今朝、枝陰に数個の宝石を見つけた。未だ大豆ほどの大きさ。でも緑に輝く小さな実は、私にとっては大げさでなく宝石そのものだ。あと10日もすれば、自分で育てたトマトを口にすることが出来る…いま、そうは思わない。おそらく、このトマトたちが熟して木を離れるのを眺めることになるだろう。

  (写真:生まれたばかりのトマトと、窓際に追いやられた野生ランとシクラメン)


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by 杜の小径  at 20:07 |  日記 |  comment (2)  |   |  page top ↑
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