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by 杜の小径  at --:-- |  スポンサー広告 |   |   |  page top ↑

或る花物語

  ダイコンR   ショカツサイ   バス停

「これって、おかしいよ。違ってる」と私。
「いいのよ、それで。間違ってないわ」と妻。
 二人の前のテレビには連続ドラマ「だいこんの花」のタイトルが映り、バックには薄紫色の野菜の花が揺れていた。その花がダイコンの花じゃあないと言う私に、普段は口応えしたことのない妻が珍しく異を唱えた。私の田舎では「だいこんの花」は白かった。
「でも、東京では薄紫のもあるのよ」
 この「東京では…」にカチンときた。
「なんだ、都会人ぶって…」
 妻は何も言わずに茶を淹れに立った。もう40年以上も昔のことである。

 7年前に妻が亡くなった。墓まで歩いて行ける処に住もうと、今の処に越してきた。マンションの近くに大きな栗林があって、あの花が一面に咲いていた。土地の人に「何という花ですか」と聞くと、「だいこんの花ですよ」と言った。私は数本の花を戴いて、その足で妻の墓に手向けた。
 翌年、栗林にマンションが建つことになった。地元の自然保護団体などが反対したが、無駄だった。結局、1年後に十数階建の大きなマンションができた。玄関脇の大きなプレートには次のような文章が書かれていた。
「Rマンションでは、地域の皆さまに愛され続けてきた栗の木やハナダイコン、竹林を可能な限り保存しました。また、やむなく伐採された栗の木や竹林は共用部での再生使用と地元の小学校などへの還元という形で有効利用しました。周辺の自然環境と共生し、地元の皆さまのふれあいの場となれば幸いです」 

 私はその看板で「だいこんの花」が、正しくはハナダイコンということを初めて知った。ついでに調べてみると、原産地は中国で、ショカツサイ(諸葛菜)、ムラサキハナナ(紫花菜)、シキンサイ(紫金菜)、 ムラサキダイコン(紫大根)などの様々な別名のあることが判った。先ほど「正しくはハナダイコン…」と書いたが、正式な名称はオオアラセイトウと言うらしい。舌を噛みそうな名前で、漢字では大紫羅欄花と書く。アラセイトウは洋花のストックのことで、花がそれに似て大きいから大アラセイトウとしたらしい。これじゃあ子どもも覚えにくいだろうと、改名の話も出たようだが植物に造詣の深かった昭和天皇の「牧野(富太郎)が最初にオオアラセイトウの和名を付けているのだから、それでよいのではないか」という一言で据え置きになったと聞く。いかに天皇のお言葉でも、こんな名前が通用するはずもなく、学者以外でこの花をオオアラセイトウと呼ぶひとはいない。別名が多いのは、そのせいかもしれない。 

 話を戻す。市はマンションが完成すると、その前に「ハナダイコン緑地」という循環バスの停留所を設けた。ところが間もなくマンションの駐車場が拡張され、緑地は10坪ほどに縮小された。しかも僅かに残った緑地は鉄柵で囲まれ、頑丈な錠で閉鎖された。今日、緑地を覗いてみた。数本の枯れた栗の木の根元には雑草が生い茂り、数株のハナダイコンが淋しく風に揺れていた。
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