FC2ブログ
 

懐かしの染太郎

             
 浅草の三社祭を見る。わざわざ見物に出かけたわけではない。正確に言うと三社祭にでくわしたのである。退院してから何処へも出なかったので「ちどり屋」で浴衣でも買おうと浅草へ出てみた。地下鉄を降りて雷門近くに来ると神輿の渡御とぶつかった。春名に「地下鉄を出るより三社祭かな」の句があるが、まさに同じ状況だ。祭好きには奇貨だろうが、私は観光化した祭は好きでない。人混みを縫うようにしてやっと所用は果たしたが、観音様まではとても辿り着けそうにない。罰当たりを覚悟で参詣は中止。

 久し振りに染太郎に寄ってみることにする。田島町(現西浅草)で70年以上続くお好み焼きの老舗である。この店、そんじょそこらのお好み焼き屋とは格が違う。「風流 染太郎」という店名の名付け親は高見順。彼の『いかがなる星の下に』に出てくるお好み焼き屋「惣太郎」は「染太郎」がモデルである。また、俗に無頼派と呼ばれた作家の溜まり場になっていた所で、坂口安吾などは此処に寝泊まりして原稿を書いていたという。酔っぱらった安吾が火傷をしたという鉄板が今でも残っている。私がこの店を知ったのは学生時代。檀一雄先生の紹介だった。檀は太宰の文学碑除幕式に同行したとき理無い仲となった女優 入江杏子とはじめは山の上ホテルで同棲するが、後に浅草千束町のアパートに住み替える。その頃のことである。太宰がこの店に来たとは聞いていないが親友の檀や弟子の田中英光が入り浸っていたから、たぶん太宰も常連だったと思われる。後年、田中は三鷹禅林寺の太宰の墓前で睡眠薬服用のうえ、手首を切り自殺している。会ったことは無いが、開高健、野坂昭如、瀬戸内寂聴、林真理子なども、染太郎の常連だったと聞いている。

 さっそく観音様の罰が当たった。やっと染太郎に辿り着くと、なんと無情にも玄関に「本日は臨時休業」のビラ。仕方が無いので田原町へ戻って「やっこ」に寄る。混んでいたが女将さんが二階に席をとってくれた。病院食で油切れした体には、硬めに焼いた鰻が格別の味だ。流れて来る祭囃子を聞いていたら、零雨の「荷風なし万太郎なし三社祭」という句が浮かんできた。それに触発されて、小生も箸袋に一句。

   檀 太宰 安吾も遥か三社祭(杜)

スポンサーサイト








※ スパム対策の為、暫くの間コメントは承認制にさせていただいております。
  コメントを頂いてから表示までにお時間をいただく場合がございますが、
  何卒ご理解くださいますよう、お願い致します。(管理人)

by 杜の小径  at 02:24 |  日記 |  comment (4)  |   |  page top ↑
プロフィール

杜の小径

Author:杜の小径

杜のMENU
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
カウンター