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風切地蔵

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 このところ風の盆の帰りに信州へ寄るのが、恒例のようになってしまった。昨年は家政婦さん夫妻を同伴したので車で平湯から安房トンネルを抜けて信州・安曇野へ出たが、一人旅の今年は糸魚川から大糸線に乗り換えて白馬へ向かった。

1おびなたの湯

 白馬駅には定宿の主人Kさんが、ジープで出迎えてくれていた。定宿と言っても山小屋に毛の生えた程度の粗末なものだが、ガイドを兼ねた主人が白馬の地理や動植物に精通しているのが気に入っている。もちろん風呂はあるが温泉ではないので、いつも直ぐ近くの源泉掛け流しの温泉へ行く。実は今回もそれが楽しみで白馬へ立ち寄った。あまり人に教えたくないのだが、宿の近くに「倉下の湯」と「小日向の湯」の二つの掛け流し湯があるが、特にお気に入りは後者。白馬村ではいちばん高い処に在って、もちろん青天井の露天風呂。写真のように巨大な岩を伝って、絶えず温泉が流れ落ちている。これにより、水で薄めることなく源泉を適温まで下げているらしい。以前は混浴だったが無粋なヤツが進言したらしくて、現在は男女が別。とは言っても此処まで登って来るには車、それも四輪駆動でないと無理だから、入る人は下山途中の山男か近くで工事をしている人くらいで、殆ど貸切状態で入れる。風呂からの景観が、また素晴らしい。特に冬がいい。降る雪を顔で受けながら真っ白な白馬連峰を眺めていると、時間の経つのを忘れる。

ヤドリギ1 ヒレンジャク キレンジャク

 ヤドリギって知ってる? この写真を見れば、あゝ知ってると思う人が多いかもしれない。どこにでもある木だから…。栗や榛の木のような落葉広葉樹に寄生し、秋から冬にかけて黄色い実を付ける。これが露天風呂の周りに、たくさん生えているんだ。この実はレンジャクの仲間の大好物で、初冬のころは風呂から実を啄むキレンジャクやヒレンジャクを見ることができる。ヤドリギの実はニカワ質のねばねに包まれているので、レンジャクの糞が木の枝にくっついてどんどん増えていく。(写真:左からヤドリギ、ヒレンジャク、キレンジャク)
 
go02.jpg  「落倉」 file_20081120T151513484.jpg

 迎えにきてくれたKさんが、ぽつりと「今日は二百十日だから地蔵に寄っていきましょう」と言う。二百十日とは懐かしい言葉だ。立春から数えて210日目に当たる9月1日ころは毎年台風が来襲する確率が多いとされた。この時季は稲の開花期なので、農家では風の厄日とか二百十日と呼んで様々な風鎮めの祭を行ってきた。「風の盆」もその一つである。10分ほど走って車は落倉湿原の風切地蔵の前に出る。恐らく数百年は経っているであろう。古ぼけた石地蔵が「塩の道」(千国街道)に向かってひそりと立っている。実は風切地蔵が在るのは此処だけではない。西の方、白馬連峰北端の大日岳(小蓮華山とういう)に一角に地蔵の頭というピークがある。そこに古いケルンに囲まれた石地蔵が鎮座している。若い頃から見慣れた地蔵だが、これが風切地蔵と知ったのは、ずっと後になってからである。もう一つは東の方、昔は善光寺や戸隠神社日の参道だった野平集落から鬼無里村に通じる柄山峠に在る。現在は廃道になっていてブナ・ミズナラ・カエデなどが生い茂っている。ただ此処は高山植物愛好者の間ではイワカガミの群落地帯として知られている。峠の途中に小さな祠が在り、中には大日如来像と風切地蔵とが並んでいる。(写真:左から大日岳の風切地蔵、落倉の風切地蔵、柄山峠の地蔵)
私は何回も白馬を訪ねるうちにKさんを通して土地の人から面白い話を聞いた。それは大日岳、落倉、柄山峠の三つの風切地蔵が直線で結ばれるというのだ。(下図参照)

                 img_20081120T193703732.jpg

 しかも三点を結ぶ直線は方位角118度で、 ちょうど冬至の太陽が昇ってくる方向となる。この直線こそ、村人たちが風害・冷害を避けるために張った結界ではあるまいか。この地方では「平川おろし」「白馬おろし」と呼ばれる山から吹き下す強風に曝されてきた。作物は勿論、年によっては藁屋根や家まで吹き飛ばし、人や家畜の命を奪われるのも珍しい事ではなかった。神仏への信仰が薄い私だが、寒村に生まれ育ったから白馬の村人の気持ちは痛いほど解る。だから白馬を訪ねた折には必ず素直な気持ちで風切地蔵に詣でるのである。
 
 9日間の旅を終え、本日無事に帰宅しました。東京が未だこんなに暑いとは…。たちまちライオンか猫の心境です。(トトノイマシタか? ココロはマタタビが恋しいデス)
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by 杜の小径  at 20:41 |  日記 |  comment (7)  |   |  page top ↑
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