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感動! 霧生トシ子さんのリサイタル

          コンサート 003         霧生トシ子  
 
 夕方から浜離宮朝日ホールで開かれる霧生トシ子さんのピアノ・コンサートを聴きに出かける。トシ子さんは、ニューヨークでジャズボーカリストとして活躍中の霧生ナブ子さんのお母さま。既に先月末、彼女からリサイタルのお話は伺っていたが、当時は小生の体調不良で、はっきりしたお返事ができなかった。体調も戻ったので、「できることなら私も駈け付けたい…」というナブ子さんの想いを背負って会場へ向う。

 トシ子さんが特別に配慮して下さったらしく、席は4列目中央の特別席。客席は1,2階とも満席で、トシ子先生の人気のほどがうかがわれる。少し早めに着いたので、舞台ではピアノの調律の最中だった。音色と反響が素晴らしい。舞台の三方を表面に波をつけた厚い木の壁で囲み音が散らないように工夫されている。天井は3階分の吹き抜けで、ここへ抜けていくせいか音質が素晴らしい。

 トシ子さんは、黒一色のコスチュームに真珠のネックレス。ピアノの前に座ると静かに一呼吸。水を打ったように静まり返った会場に、深く鋭いピアノの音が響く。
最初の曲はベートーヴェンの『自作主題による六つの変奏曲』。彼がこれを作曲したのは難聴がひどくなり有名な『ハイリゲンシュタットの遺書』を書いた頃で、そのせいか第5章には葬送曲を思わせる沈痛な趣がある。堂々たる演奏が終わると、会場から爆発したような拍手が湧き起こった。

 2番目はシューベルトの『楽興の時』で、即興的な小品6曲から構成されている。
 第1曲モデラートは、転調による鮮やかなコントラストが見事である。
 第2曲アンダンティーノは、穏やかな曲が3拍子で演奏されるのだが、時に加わるリズム的変調が高度なテクニックをうかがわせる。
 第3曲アレグロ・モデラートは、美しくリズミカルなタッチが聴きどころ。
 第4曲モデラートは、シンコベーションによる音色の変化が美しいが、これは奏者がジャズ演奏にも熟達しているからかもしれない。
 第5曲アレグロ・ヴィヴァーチェは、シューベルトらしい即興的転調の面白さが、奏者の高度なテクニックで余すところなく表現された。
 第6曲アレグレットは、賛美歌風の曲だが、ここにも高度な転調技法が使われている。

 3番目はショパンの『マズルカ』。マズルカは彼の故国ポーランドの民族舞踊曲である。ショパンは21歳のときウイーン経由でパリに旅立つ。途中でワルシャワがロシヤ軍によって陥落したことを知り帰国を諦め、生涯の殆どをパリやウイーンで過ごす。そうした彼にとって『マズルカ』は望郷の曲でもあった。軽快な中にも哀愁を感じるのは、そのせいであろうか。
 
 最後は今夜のハイライトとも言うべきショパンの『12のエチュード』。第1番の『牧童の笛』、第9番『蝶々』、第11番『木枯し』、第12番『大洋』などを含む練習曲全12曲が一気呵成に演奏されるのは圧巻であった。

 演奏が終わってもアンコールの拍手が鳴り止まず、トシ子さんは7回舞台に現れて挨拶を返し、そのうち2回は小品を演奏してアンコールに応えた。正に感動の一語に尽きるリサイタルであった。
 ナブ子さんから「母のリサイタルの様子を知らせて」と頼まれていたが、舞台の撮影はもちろん禁止。終わってからトシ子先生に無理にお願いして、ファンに囲まれているところを1枚だけパチリ。ナブ子さん、これでお許し下さい。お母さまは、本当に素敵でしたよ。

【霧生トシ子さんの略歴】
東京生まれ。東京芸術大学、ウィーン国立大学卒業(最優秀特別賞受賞)。L.コハンスキー、井口秋子、R.ハウザー、宅孝二の各氏に師事。NHK・毎日音楽コンクール第2位、ウィーン・ステファニー・ピアノコンクール第1位。ABC交響楽団の欧州公演、東京フィルとの東南アジア公演、リンツ・ブルックナー交響楽団の定期公演のソロイストを努める。1985年、カーネギーホールでリサイタルを開催、1992年、インド・国際ジャズフェスティバルに参加するなど、世界各国で活躍。レパートリーはバロックからジャズまで幅広く、ショパン名曲集、ラヴタッチピアノ「いそしぎ」などのレコードもリリース。尚美学園大学教授。

  
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by 杜の小径  at 02:40 |  日記 |  comment (4)  |   |  page top ↑
Comments

羨ましいです

 素敵なリサイタルの様子が、とてもよく伝わってきました。
田舎に住んでいますと、このような感動に巡り会う機会が
少ないのが残念です。

 先生もお体がすっかり快復されたようで、ほっとしています。
これから寒くなります。どうぞく、れぐれもご自愛くださいませ。
by 磯貝あずさ 2008/10/31 09:43  URL [ 編集 ]

No title

我夢ちゃん
愛情に溢れたリサイタル・レポート、本当にありがとうございました!
先ほど本人と電話で話して、「堅く、間違えの無い演奏より、自分のキャラクターを前面に出した演奏で、お客さん達のエキサイトした空気が感じられた。。。。」と言ってました。
本当に、本当にありがとうございました!!
by nabukojazz 2008/10/31 09:46  URL [ 編集 ]

No title

 ナブ子さん、早速の書き込み、有難うございました。少しでも
リサイタルの様子をお伝えできたでしょうか。とにかく、あんなに
感動に満ちたリサイタルは初めてでした。
  
 演奏のときは毅然とした雰囲気を醸し出していらっしゃった
お母さまが、アンコールにお応えになるときは小首を傾げて
ちょっとはにかんだような表情をなさる…それが仔犬のように
可愛くて(失礼)とっても魅力的でしたよ。

 今日の東京は、朝から気持ちよく晴れています。
by 杜詩夫 2008/10/31 11:43  URL [ 編集 ]

No title

あずささん、先日は有難うございました。

 東京に住んでいると、確かに音楽会や展覧会に行くには便利です。
しかし大自然の中で静かに時を過ごしている生活が羨ましいです。
年内に、またお邪魔するかもしれません。ご主人に宜しくお伝え下さい。
by 杜詩夫 2008/10/31 13:59  URL [ 編集 ]
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