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冬来たる


   海に出て木枯帰るところなし(誓子)

   木枯を背(そびら)に聞けば魔笛めき(杜詩夫)

 東京では昨30日に木枯一号が吹いた。例年より十日ほど早いそうだ。冬に入るのは正確に言うと七日の立冬以後だが、木枯一号と聞くと改めて「冬来たる」といった気持ちになる。冬の到来をいちばん先に感じるのは、朝晩の気温の低下である。冬の花としては冬椿、山茶花、ポインセチアなどがあるが、暖冬のせいでコスモス、金木犀、芙蓉、カンナなどの秋の花が未だ咲き残っているのでぴんとこない。

 花は無くても日本人は四季を感じ、それぞれの季節の歌を遺している。歌集で四季をはっきり区別しているのは十世紀初頭に完成した『古今集』からで、それに百年以上先立つ『万葉集』では四季の分類は無い。しかし、分類こそされていないが四季の歌は勿論ある。かと言っても冬の花々が絢爛と登場するわけではない。当時最も珍重された冬の植物は松、竹、梅であった。三つとも寒に堪えるというので中国では「歳寒の三友」と呼んで盛んに詩歌や絵画の題材にしていた。当時の日本人は、これを真似たのであろう。『万葉集』から松竹梅の歌をアト・ランダムに探してみよう。
 
  松…「八千種の花は移ろふ常磐なる松のさ枝をわれは結ばな」(大伴家持)
 
  竹…「小竹(ささ)の葉はみ山もさやにさやげども吾は妹思ふ別れ来ぬれば」(柿本人麻呂)
 
  梅…「我が園に、梅の花散る、ひさかたの、天より雪の、流れ来るかも(大伴旅人)
 
 俳句では立冬から翌年の立春までを冬としている。冬の句は沢山あるが、印象に残っているのは次の句である。いずれの句にも花は無い。
 
   鳶の下 冬りんりんと 旅の尿(不死男)
 
   冬すでに 路標にまがふ 墓一基(草田男)
 
   父無き冬 子らは麒麟を始めて見き(波郷)

 十月はコンサートや展覧会には格回訪れたが、旅はあまりしなかった。東京を離れたのは茅ヶ崎と安曇野だけだった。今月は、できるだけ旅をした。とは言っても姉が重篤な病床にあるので、あまり長い旅はできないが…。いずれにしても、あまり愉快でないことが多かった十月が終わってほっとしている。それが逝く月を送る感慨の全てである。
 
   慌しい何かが
   脇を通り過ぎて行く
   口を閉ざして
   堪えている
   蓑虫

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by 杜の小径  at 13:49 |  日記 |  comment (4)  |   |  page top ↑
Comments

No title

 おはようございます。先日は俳句の添削を有難うございました。大量の駄句を一晩でみていただいたとお聞きして感激しています。いずれ句集にまとめたいと思っています。そのときは改めてご指導をお願いいたします。

「杜のギャラリー」がお休みしているのは残念ですが、いつもエッセィのような先生の日記を楽しみに拝読しています。これだけは、いつまでもお続け下さい。
by 中村紫水 2008/11/02 07:59  URL [ 編集 ]

拝復

 こちらこそ美味しい柿を送っていただき、却って恐縮しております。

 先日も書いたことですが、句が以前よりずいぶん良くなりましたね。
あとは、上手に創ろう、うまく見せようという気持ちを如何に捨てる
ことができるかです。基礎は出来ましたから、一層ご精進下さい。
by 杜詩夫 2008/11/02 21:44  URL [ 編集 ]

No title

本当に急に寒くなりましたね~。

あっという間に冬になってしまったようで
コート類を実家から引っ張り出してきました。

しっかりあったかくして、
今年の冬を楽しみましょう~。

村瀬さんの日記は、エッセイのようで文学作品を読んでいるような気持ちになります。
背筋を正したくなります。

また旅をなさるとのこと、存分に楽しんでいらしてください。

日記も楽しみにしています~。
by 松尾さやか 2008/11/03 21:45  URL [ 編集 ]

No title

 さやかさん、お訪ね下さって有難う。小生の日記は折々の感懐を
書き流した駄文、お褒めいただいて冷汗三斗の想いです。

 あなたのような若くて才能のある方が入ってくださり、麹町倶楽部が
いっそう楽しくなりましたよ。ところで、先月はどうしたの? 風邪でも
をひかれたかと心配していましたよ。今月はお会いできるかな。
 寒くなるから、お体大切にしてね。
by 杜詩夫 2008/11/04 06:14  URL [ 編集 ]
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