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川瀬

   年の瀬の夜汽車の笛は魔笛めき(杜詩夫)
 
 信州への短い旅から戻る。お嬢さんの急病で渡米中のM代夫妻から電話があって、28日に帰国するから30日に大掃除に行く、今回は妹も連れて三人で行くと言う。最近は師弟の関係が逆転して、「大掃除はいいよ」などと言おうものなら、「正月くらい綺麗にして迎えなさいよ」と叱られるに決まっている。で、早々に旅を切り上げることになった。
 妻が逝って七年。中国へ旅した一昨年を除いて、毎年の正月を穂高で迎えてきた。昨年の元日登山で傷めた左膝が未だ痛む。山へ登るのは無理としても、大掃除が終わったらとんぼ返りして、数日は雪山でも眺めながら過ごしたい。

 冒頭の句は帰りの夜汽車で物したもの。年の瀬は歳末の異称として古くから遣われてきた。「瀬」には川水の激しく波立つ場所とほかに「渉る」という意味がある。慌しく年始末をしてから新しい年に渉るということだが、この裏には一生を川の流れに喩えるという人生観がある。『方丈記』の冒頭は「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし…」であり、『奥の細道』は「月日は白代の過客にして、行きかう年もまた旅人也。船の上に生涯を浮かべ…」で始まっている。
長明にしても芭蕉にしても、人の一生は流れに任せた小舟、人為では如何とも為し難いという無常感が根底を流れている。さて、あと僅かで年の瀬を渉ることになる。この瀬を
越えた先には、どんな景色が展開されるのだろうか。

 新春の麹町倶楽部の詠題は「流れる」。お一人おひとりの顔を思い浮かべながら、どんな作品が集まるだろうかなどと思い巡らせている。今朝は風も無く、師走とは思えないほど静か。早朝4時、起きていますか? とメールを下さった方がいる。終夜眠れなかったようだ。それぞれの人が、さまざまな想いで歳末を過ごしている。心安らかに瀬を渉って欲しい。

   騒がしい何かが
   脇を
   通り過ぎて行く
   雪山だけを見ている
   年の瀬
  
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by 杜の小径  at 08:02 |  日記 |  comment (4)  |   |  page top ↑
Comments

No title

 おはようございます。
M子たちは、元気でしたか。

私も、今日から、大掃除です。
今年も、たくさんおせわかけました。来年も、お世話かけま~す。
日記を読ませていただき、幼き頃、笹舟を浮かべ、波間に消えるまで見送った、そんな思い出が懐かしいです。
私達には、美しい思い出が、ぎっしりと詰っております。
心の支えとして生きていける。
先生もお元気で、生きてみましょう。





















by  か子 2008/12/29 09:40  URL [ 編集 ]

No title

 か子さん、おはよう。
 M代は未だ。明日来てくれる予定です。マーコも来るらしいから宜しく言っておきます。

 旅心が醒め切れないのか眠れないので、お節料理を作りました。大根なます、酢蓮、
それに、きんとん、昆布巻…etc.。とうとう徹夜でした。大掃除が住んだら、また信州へ
行くつもりです。ご主人に宜しくお伝え下さい。
by 杜詩夫 2008/12/29 10:51  URL [ 編集 ]

No title

 年の瀬も押し迫ってまいりました。今年はいろいろとご指導いただき有難うございました。
 来年も、よろしくお願い申し上げます。年の終わりにあたって、先生のご健康をお祈り申し上げます。
by 星野智恵理 2008/12/30 05:11  URL [ 編集 ]

No title

 智恵理さん、おはよう。今年は、よく頑張ったね。ご自分の作品を、
今年の初めのものと比べてごらんなさい。どれだけ変わったか、
進歩したかわかります。来年も、頑張りましょうね。

by 杜詩夫 2008/12/30 10:28  URL [ 編集 ]
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