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三月最後の旅

コピー ~ 2009_0317_180803-IMG_0192 稲荷 2009_0309_133930-IMG_0172 - コピー

 短い旅の終わりに見る富士山は見事だった。新幹線新富士駅を過ぎるまでの僅かな時間だったが、車窓いっぱいに迫る山容はいつ見ても美しい。ところで、私は静岡県の生まれだが、富士山を懐かしいとか誇りに思ったことはない。その点は鹿児島県人が桜島を見たり福島県人が磐梯山を眺める気持ちとは、かなり違っている。車窓の富士山も静岡駅辺では赤石山系の山々に視界を阻まれて見ることはできない。まして私の生れた佐久間はもっと奥、天竜川の中流域だから富士山など見えるはずもない。恥ずかしながら私が富士山を初めて見たのは、大学受験のために上京した折であった。以来、東海道を列車で通るときは、いつも山側に席を取って富士山を眺める癖がついてしまった。そして暫し、富士山も海も見ることなく過ごした少年時代をほろ苦く思い起こすのだった。
 
 富士山を眺めてこんな想いに駆られるのは、久しぶりに小学校の同窓会に出たせいかもしれない。なにしろ私にとっては小学三年生以来の再会だった。幹事のK君が一年時の集合写真を持ってきてくれたが、友人は勿論、自分がどれかも判らなかった。  
  
      境涯は
      問わず語らず
      再会の友と
      ただ
      杯を傾ける

  これは昨年、二十年ぶりに旧友と再会したときの心境を詠った五行詩だが、この夜ばかりは勝手が違った。最初のうちこそ互いに遠慮してぎことなかったが、酒が回るにつれて佐久間弁丸だしの悪餓鬼に戻っていた。中学校長を歴任した後、現在は手広く茶園を経営しているKは恋女房との馴れ初めを声色入りで披露した。特殊溶接の技術を活かして介護用浴槽を製作しているWは奥さんを亡くした寂しさからフィリピン・パブの若い女性に数百万円入れ揚げ、息子と嫁から吊るしあげられたと笑いながら話す。それを聞いた木工工場主のYは、中小企業向けに受けた融資三百万円を競艇で三日間でパーにしたことがあったと自慢気に吹聴した。まるで競うように若い頃の懺悔話をするのも、現在が幸せなんだからだろう。この日の出席はクラスメートの約半分。十名近くが故人となり、」残りは自分か連れ合いが病気で出席できないということだった。まさに人生は様々である。
 
 翌日は東海道線で豊橋へ。駅まで高校同期のGが出迎えてくれる。京大出の遣り手の弁護士だがガチガチの保守派。此処には高校の先輩で慶応元教授のKがいるが、二人の相性が悪い。何年か前に三人で飲んだときに些細なことで、あわやという雲行きになったことがある。以来、二人を一緒にしないようにしている。「寿月」でご馳走になる。
 
 夜は豊川に出て妙巌寺(通称・豊川稲荷)に泊まる。この寺には若い頃、知客寮(しかりょう)に入って修業の真似事をしたことがある。方丈の福山諦法老師とは旧知だが、現在は大本山・永平寺の管主を兼務されていてお留守だった。飛竜頭、胡麻豆腐、もずくなどの精進料理が懐かしい。

 帰途、原宿で降りて積雲画廊で開催中の漫画家・岩本久則(いわもときゅうそく)さんの個展へ。今日が最終日だった。氏は環境保護、バードウォッチング、ホエールウォッチングでも知られ、特に鯨の保護に力を入れている。ナチュラリストH氏と一日違いで会えなかったのは残念だったが、居合わせたW教授と渋谷へ出て「駒形どぜう」で久闊を叙する。慌ただしい旅だったが、忘れ得ぬ思い出を残すことができた。

       (写真:左から同窓会、豊川稲荷本殿場、岩本久則さん)




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by 杜の小径  at 01:27 |  日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑
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