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三月尽(さんがつじん)

                 ヒメギフチョウ

    旅終へて また旅恋ふる 三月尽(杜詩夫)
   
    旅のわけ 問ふ人もなく 弥生尽( 〃 )
   
    旅鞄に 中也一冊 春惜しむ   ( 〃 )
 
 尽とは月末のこと。したがって三月尽は三月末を表す。弥生尽、惜春、春惜しむは、いずれも同類の春の季語である。
 今月も、よく旅をした。山梨、浜名湖、豊川と延べ十日間家を空けた。四月も旅に明ける月となる。中でもいちばんの楽しみは白馬・八方尾根の旅。冬鳥と夏鳥が混在する季節で、アトリ、レンジャク、ベニマシコ、ミヤマホオジロなどに逢えるだろう。植物ではカタクリ、フクジュソウ、カンアオイ、ウスバサイシンなどが見られる。運が良ければ「春の女神」と呼ばれる天然記念物のヒメギフチョウにお目にかかれるかもしれない。この蝶はウスバサイシンに産卵し、成虫になるとカタクリの花から吸蜜する。

 私の旅は一人旅が多い。山へ登るときは安全のためである。独りだと撤退を決断し易いのと、若いころアンザイレンしていた岳友を喪ったこともあって単独行に決めた。単なる旅行にしても観光地を好む人もいれば、あまり人に知られていない田舎を好む人もいる。日常生活でも趣味嗜好の細部には個人差がある。例えば一口に花好きと言っても、園芸種、山野草など好みは様々である。考えてみると、映画を観たり食べ歩きするのも独りが多い。気を遣ったり話題を探すのが苦手なのである。付き合ってくれるメッチェンが居ないせいでもある。

 旅が好きですかと問われて、嫌いですと答える人は殆ど居ない。人は何故そんなに旅を好むのだろう。―人間は農耕文化になってから一箇所に定住するようになったが、魚獣を追い掛けたり木の実を食べていた狩猟時代は旅が生活の全てだった。その gene が遺っているのかもしれない。
 私個人は、読書が旅好きを助長したようだ。小学生のころ、兄の持っていたデフォーの『ロビンソンクルーソー』を貪り読んだのが最初かもしれない。いま、書架を見回しても旅に関するものが多い。芭蕉の『奥の細道』などは勿論だが、太宰治の『津軽』や永井荷風の『ふらんす物語』、外国ものではヒュー・ロフティングの『ドリトル先生航海記』、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』まで、私にとってはも紀行文学の側面を持っていた。特殊なものでは東山魁夷の画集『北欧旅想』、荒木経惟の写真集『センチメンタルな旅」なども、この範疇に入る。

 情報と交通の発達、ハイテクとITの進歩は旅を便利・快適にさせてくれた。しかしグローバル化は世界のモノカルチャー化を加速させ、異文化に触れた時の「驚き」を失わせてしまった。例えば空間的にロシアの旅をしても、私はもう大した驚きや新しい感動は期待できないだろう。それよりも異文化の衝突が大きなテーマであるロシア文学を読んだ方がよっぽど旅らしい旅ができるのではないかと考えてしまうのである。ロシアに限らずあらゆる文学作品には、その舞台である土地の上で人々が何を感じ、考え、行動したかが描かれており、現代の旅では伝わってこないものを感じることができる。―と、言いつつも私は来月も旅に出かける。

        4月のスケジュール

 4月2日~ あきるの市周辺の里山と野鳥・野草の観察
 〃 4日  阿修羅展(国立博物館)
 〃 5日~ 韮山市、北杜市(わに塚桜、神代桜の桜観察と薮内美術館訪問)
 〃 10日~ みずくき書道会社中展
 〃 13日  麹町倶楽部有志と同社中展へ
 〃 15日~ 白馬・八方尾根方面(野鳥、ヒメギフチョウ、早春の山野草観察)
 〃 20日~ 奈良・大和路
 〃 25日~ 人間ドック入り

        (写真は、逢えるかもしれないヒメギフチョウ)
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by 杜の小径  at 06:10 |  日記 |  comment (2)  |   |  page top ↑
Comments

No title

先生の書架に『ドリトル先生航海記』があるのですか?私も大好きですのでうれしいです。『ロビンソン・クルーソ-』も大好きです。無人島で工夫しながら暮らしてゆく様子にわくわくしたのが懐かしいです。近年、ロビンソン・クルーソ-には実在のモデルがいた、という本に夢中になりました。
 私も、一人で買い物や美術館、に行くことが多いです。私も話題を探したり、気を遣ったりするのがあまりうまくないので・・・。以前は友達と喫茶店でおしゃべりが続かなかったのですが、最近は少し進歩したようです。最近髪を切りに行ったら美容師とおしゃべりができました。多分偶然だと思いますが・・・。
by ユナ 2009/03/31 22:00  URL [ 編集 ]

No title

 ユナさん、こんばんは。
 こちらは数日前の初夏のような陽気から一転して、ここ二日ほどは10℃以下の寒さが続いています。明日は雨、もっと寒くなりそうです。明後日から白馬へ行くので、天候が心配です。御地も荒れた天気が続いているようですね。

 ユナさんのお話を伺っていると、私とかなり似たところがありますね。(失礼!)思うに…人間は持って生まれたgene が違うし、後天的にも様々な経験の掣肘を受けていますから、趣味嗜好が違っていて当たり前。まして価値観が一致することは、たいへん難しいことです。一方、人間は社会的存在ですから、或る程度己を殺して周りと妥協していかなくてはなりません。それは解っているのですが、時どき その軋みに耐えられなくなるときがあります。そんなとき旅に出るのです。

 そんな私が言うのもおかしなことですが…若いユナさんは、あまり自己に沈潜しないで努めて沢山にの友人とお話するようにしてください。新しい世界が開けますよ。

 今夜は上田正昭さんの『日本神話』(岩波新書)を読んでいます。この頃は散歩するように特別の目標もなく本を読むことが多くなりました。
by 杜詩夫 2009/04/01 01:09  URL [ 編集 ]
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