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季節の花―馬酔木(アセビ)

               アセビ
 
「この春、僕はまえから一種の憧れをもっていた馬酔木の花を大和路のいたるところで見ることができた。」…
 これは堀辰雄の『浄瑠璃寺の春』の書き出し部分である。ここで質問。この中の「馬酔木」を、あなたはどのようにお読みになりますか? アシビ? それともアセビ? 実は私にも正確な答えは判らない。堀辰雄逝きて半世紀、彼に尋ねる術(すべ)もない。植物学上はアセビである。ただし伊藤左千夫が中心だった根岸短歌会の短歌雑誌、また水原秋桜子が自ら主宰する「破魔弓(はまゆみ)」を改題した俳句雑誌などは、いずれもアシビと読む。

 そもそも馬酔木という漢字字体が当て字である。葉や茎にアセボトキシンという有毒成分を含み,馬が食べると中枢神経が麻痺,酔ったような状態になったのがその名の由来という。

『万葉集』には、この花を詠ったものが10首ある。代表的なものを2首あげると…。
  
  池水に影さへ見えて咲きにほふ安之婢の花を袖に扱入れな(大伴家持)
  磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに(大伯皇女
 
 大伴さんは「安之婢」と表記しているので、どうやらアシビと読むようだ。ところが大伯の歌には井上通泰博士(宮中顧問官を務めた国学者で柳田國男の兄)が、こんなことを言っている。曰く「馬酔木はアシビと詠むべからず。アセミと読みて今のアセボの事なり。アシビと假字書にしたるは馬酔木とは別にて今のボケなり。」
 ますます判らなくなってきたが、馬酔木っはもともと別称が多く、標準和名のアセビの他にアセボ、アセミ、アシミ、アセブ、アシミノキ、バスイボクなどがあり、そのほかに麦飯花、麦花、毒柴、米米(こめごめ)など、『日本樹木方言集』には153もの方言が収録されている。まあ、馬が食べると酔って足がなえることから「足癈(あしじひ)」と呼ばれ、 次第に変化して「あしび」そして「あせび」となったというのが妥当な説であろう。ちな みに学名はPieris(ピエリス)。これはギリシャ神話の詩の女神「Pieris」の名前に由るもの。

 話が横道に逸れてしまった。対価を貰って原稿を書く場合は、プロだから編集者に原稿を渡すまでに数回の推敲を重ねる。が、今はクールダウンの為、やがて文章も詩も書かなくなる日の準備だから、はっきり言っていい加減である。そう思って読んでいただきたい。(閑話休題)

「そのなかでも一番印象ぶかかったのは、奈良へ著いたすぐそのあくる朝、途中の山道に咲いていた蒲公英や薺のような花にもひとりでに目がとまって、なんとなく懐かしいような旅びとらしい気分で、二時間あまりも歩きつづけたのち、漸っとたどりついた浄瑠璃寺の小さな門のかたわらに、丁度いまをさかりと咲いていた一本の馬酔木をふと見いだしたときだった。」…
 これは冒頭の『浄瑠璃寺の春』の続きである。この中で私が興味を覚えたのは「一番印象ぶかかった」という一節である。堀辰雄は馬酔木を印象深かった」とは書いても、「好き」とは言わなかった。実は、この花に対する私の気持ちにも似たところがある。小さな鈴のような花形、上質のチーズを思わせる花の色。決して嫌いではないが、好きだとは言い切れないのである。熟々考えるに、彼岸花に対してもこんな気持ちがある。両者とも有毒植物、私の気持ちの奥底に無意識に危険から遠ざかろうという防御本能が働いていたのかもしれない。浅ましいことである。
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