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帰る場所

            マツダ1

 BGM代わりに点けっ放しにしてあるTVから、聞き覚えのある声が…。画面には松田博司さんの顔が映っていた。番組表で調べると『ちい散歩』の中の「昭和風景―夢がある雑誌の付録」という番組だった。私は自他共に認める音痴だが、人の声を聞き分ける不思議な能力があるらしい。最近も初対面の方と話していて、出身地をぴたりと当てたことがある。と、いうわけで図らずも松田博司さんと久し振りに画面でお会いすることができた。正直に言って、お顔はだいぶ老けているが訥々とした語り口、そして何よりも皮製のハンチングを斜めに被ったモダンな雰囲気は昔のままだ。
 松田さんとお付き合いがあったのは私が現役の編集者だった頃だから30年も前になる。当時は亀戸天神の近くに住まわれていて、アトリエでの打ち合わせが済むと一緒に亀戸天神の藤の花を眺めたり、往時は駅前通りに軒を連ねていた「さくら鍋」屋に入ったりした。アイディアはもちろん、手先が器用でまるで魔法のように夢のある付録を考えて下さった。ドラえもんの秘密道具のいくつかも、松田さんの手によって子どもたちに届けられた。

   気づかずに
   落としてきたのだ
   そろそろ
   拾いながら
   帰ろう

 この詩は三日前の麹町倶楽部例会に、山碧木星さんが出された作品である。TVで松田さんとお会いしたとき、なぜか、この詩が思い出された。例会の席で私は、これに次のようなコメントをした。

 ―「気づかずに落としてきたものだ」には、いろいろある。人生の半ばで触れあった人、読んだ本、旅の思い出など…。私ほどの齢になると、ふっと昔読んだ本を読みたくなったり、触れ合った人ともう一度会ってみたくなる。さて、この作者は拾い集めたものを持って何処へ「帰ろう」としているのだろう。そして私は…。―

 思えば今年は、春に数十年ぶりに小学校の同級会に出席、秋には30年ぶりに大学の同期会に出、今月の4日には旧社員が集まりを開いてくれた。私もぼつぼつ、思い出という荷物を整理して帰るべき処を探すときが近づいたのかもしれぬ。

   土に還りたき埴輪に冬の雨(杜)
  
   帰る場所無くて小鷺の凍てしまま(〃)
 
   昏れ残るもののひとつに寒椿(〃)
   
   年の瀬の夜汽車乗る人降りる人(〃)
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by 杜の小径  at 14:11 |  日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑
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