スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。





※ スパム対策の為、暫くの間コメントは承認制にさせていただいております。
  コメントを頂いてから表示までにお時間をいただく場合がございますが、
  何卒ご理解くださいますよう、お願い致します。(管理人)

by 杜の小径  at --:-- |  スポンサー広告 |   |   |  page top ↑

あまり有名でない俳人 嶋田青峰のこと

 25日のブログで秋元不死男を取り上げたとき、近日中に彼の師である嶋田青峰について書きますと約束した。忘れないうちに約を果たしておこうと思う。
 ところで、嶋田青峰と言っても知らない人が多いだろう。彼が秋元不死男に俳句の手ほどきをしたこと、新興俳句運動に理解を示していたというだけで「治安維持法」による新興俳句派に対する弾圧事件「俳句事件」に連坐して起訴されたことなどは、前に述べた。
「わが影や冬の夜道を面伏せて」―この不吉な句が暗示するように、青峰は67才の老体で早稲田署に検挙され、肺結核が再発して留置場で朝4時すぎに喀血したのに昼過ぎまで手当もせずに放置され、ようやく夕刻近くに帰宅を許されたが、その後一度も立つことができぬまま死んでいった。嶋田青峰の俳句は、次のように詩情と哀感に満ちたものが多かった。
   
   工女らに遅日めぐれる機械かな
   蛇打つて森の暗さを逃れ出し
   出でて耕す囚人に鳥渡りけり
   曝書しばし雲遠く見て休らひぬ

 彼に限らず、言論弾圧の被害者に新興俳句運動の関係者が多いことは一つの謎である。それを解くキイが彼の経歴にある。青峰は1908(明治41)年、国民新聞社に入社、高浜虚子のもとで文芸欄を担当。虚子退社の後を受けて学芸部長となった。 またその間、俳誌『ホトトギス』の編集を助けていたが、1922(大正11)年、篠原温亭とともに『土上(どじょう)』を創刊。温亭が没した1926(大正15)年以降は「土上」を継承、主宰者となった。その頃から新興俳句運動に理解を示し、また影響力をもつようになった。はっきり言えば『ホトトギス』、即ち虚子の敵となったのである。その背景を推理してみよう。
 
「春風や闘志抱きて丘に立つ」―まるで中学生並の駄句だが、実はこれ子規の死後は小説に没頭していた虚子が10年ぶりに俳壇に復帰したときの作である。「志抱きて」とは、新傾向俳句ノリーダー河東碧梧桐への対決の決意を表している。不倶戴天の関係といわれる虚子と碧梧桐だが、ある時期までは兄弟以上の仲であった。旧制伊予中学(現・愛媛県立松山東高校)の同級生で、京都の三高時代は寝食を共にし、その下宿を「虚桐庵」と名付けるほどだった。訣別の原因は守旧派の虚子と新傾向を探る碧梧桐との俳句観の違いとされているが、両者にはもっと生臭い出来事があった。虚子は碧梧桐の入院中に、彼の婚約者だったた大畠いと(糸子)を横取りし、結婚してしまう。また虚子は子規の後継者として俳壇に確固たる地位を築くが、自らの死がちかいことを悟った子規が後事を頼んだときには「大兄の鋳形にはまること能はず」と一旦は断り(道灌山事件)ながら、子規の死後はちゃっかり後釜に座っている。虚子は、そんな男だった。
 
 余談になるが今年 第51回毎日芸術賞を受賞した金子兜太も、青峰の弟子筋に当たる。彼が青峰主宰の『土上』に入門したのは昭和15年(21歳)で、「葡萄の実みな灯を持ってゐる快談」の句を、青峰は「胸のすくような爽快な感じが溢れている」と評している。翌年2月号で青峰は「遅刻見に山羊鳴き鶏は首かしげ」「訃に急ぐ雀鳩など飛び立たせ」などの兜太の句を激賞するが、その直後に検挙され、『土上』は終刊となる。この年、兜太は東大へ入学、加藤楸邨主宰の『寒雷』に入会する。私事になるが兜太と共に『海程』を興した原子公平(東大卒、句集『浚渫船』『酔歌』、評論集『俳句変革の視点』など)は『寒雷』を通じて個人的に親しくして戴き、たまたま勤め先が小学館ということもあって、足の不自由な公平さんと殆ど毎朝、高田馬場から神保町までタクシーを相乗りした思い出がある。

 本題に戻るが、新興俳句が激しく弾圧されたとき、虚子は日本文学報国会俳句部会の会長だった。この会がどういう会だったかは、1943年4月に九段の軍人会館で開かれた第一回文学報国会の議題が「米英撃滅と文学の実践」であったことを見れば明らかだろう。弾圧を指揮した内閣情報局が、文学報国会と相談しないわけはない。そればかりか新傾向俳句の台頭に危機感を持っていた虚子が、ある種の情報を出して弾圧を行わせたという見方もある。新興俳句弾圧の真相は、いつの日にか明らかにされるのだろうか。(写真:故郷の志摩市磯部町の的矢神社に建つ青峰の句碑「日輪は筏にそそぎ牡蠣育つ」)

スポンサーサイト





※ スパム対策の為、暫くの間コメントは承認制にさせていただいております。
  コメントを頂いてから表示までにお時間をいただく場合がございますが、
  何卒ご理解くださいますよう、お願い致します。(管理人)

by 杜の小径  at 18:54 |  日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑
Comments
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

杜の小径

Author:杜の小径

杜のMENU
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。