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季語「夜の秋」―つづき

               飛行機雲1

 長野在住の俳人 中村紫水さんから季語「夜の秋」について、お便りをいただきました。古典に詳しい方だけに、「夜の秋」は古今集などに詠われた日本人独特の季節感と同じではないだろうか、という ご感想でした。
 この季語が日本人独特の季節感という点では、小生も同感です。ただ、私は和歌に於ける季節感と、芭以降の俳諧に於ける季節感には微妙な違いがあるように思います。結論的に謂うと俳句のほうが繊細というか、もっと心理的要素が濃いように感じます。その違いを説明するのは、なかなか難しいことです。以下に「夜の秋」の俳句と、季節の移ろいを詠んだ古今集の歌を併記してみます。皆さんも、じっくりと味わってみて下さい。各作品に小生の寸感を添えましたが、目障りでしたら飛ばしてお読みください。
   
   西鶴の女みな死ぬ夜の秋(長谷川かな女)

 西鶴の女とは、一連の心中物に登場するお夏、おせん、おさん、お七、おまんである。
「みな死ぬ」というフレーズから、この句が直接芝居を詠んだものでないことが解る。心中を究極の愛の形と見るか、死を選ばざるを得なかった彼女たちを憐れむのか、読み手に様々な選択を迫る。私は生粋の江戸っ子だったかな女の、西鶴に対するシニカルな視線を感じる。
   
   卓に組む十指もの言ふ夜の秋(岡本 眸)
 
 卓を挟んで向き合う男女。思い沈黙の時間が流れている。作者が女性だから、十指を組んでいるのは男性のほうであろう。女は固く組んだ男の手を見詰めながら、明確に男の気持ちを読み取っている。

   梳く音の髪をはなれず夜の秋(鷹羽狩行)

 愛に悩む女の姿が想像される。それは、不倫の恋かもしれない。「髪をはなれず」に、断ち切れぬ女の想いが籠められている。上掲「卓に組む」の句と共に、無常感を遠くに匂わせ、移ろう季節に重ねるような背景である。

   攻窯に残す一灯夜の秋(林十九楼)
 
 陶芸で、窯の火を最高温度に上げるのを攻窯と謂う。その一瞬のために、陶工は夜を徹して窯前に座り続ける。熱いはずの窯場に「夜の秋」という季語を配することで、緊迫した雰囲気と一芸に打ち込む陶工の気迫が伝わって来る。

   秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ おどろかれぬる(藤原敏行)古今

 詞書に「秋立日よめる」とあるように立秋の日の歌である。透明感のある歌であるが、風の音に驚くといった抽象的でオ^バーな表現は、いかにも古今集所載の歌らしい。

   夏と秋と行きかふ空の かよひぢは かたへ涼しき風や吹くらむ(凡河内躬恒)

 詞書にある「水無月の晦日の日」とは旧暦六月の末日のこと。往く夏と来る秋が行き交う空の路は、片方だけ涼しい風が吹いているのだろうという意味である。前掲の藤原敏行の歌以上に技巧的で、私はこうした歌は好きでない。

 以上のように季語「夜の秋」は夏に感じる秋の気配ということになっていて歳時記にも夏に分類されています。しかし実際の作品を見ると、涼しいといった皮膚感覚を詠んだものは少なく、殆どが複雑な心の襞を この季語に仮託しています。一方、古今集の歌では季節の変わり目を様式化して詠んでいる例が多いのです。時代を無視して、現代俳句と古今集の作品を比較するのは些か乱暴だ、と自分でも思います。今日は季語の持つ象徴性へのアプローチですので、お許し下さい。

【追記】Mixiメイトのパピィさんが、近く従来の範疇を超えた新季語の研究ミュニティを立ち上げられる予定だそうです。期待してお待ちしましょう。




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