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詩歌で偲ぶ原爆忌

               image.jpg

   草に こゑ
   石ころに こゑ
   太田川 滾り咽ぶ
   ヒロシマ
   〇八・〇六・〇八・一五 (杜詩夫)

080429EP003.jpg

 広島の平和記念公園の中には、数十基の慰霊の像や碑が建てられている。それぞれから、原子爆弾という残虐な兵器で殺戮された無辜の人たちの声無き声が聞こえてくる。それらの中で、特に目を惹く像がある。太田川に架かる西平和大橋の近くに建つ「教師と子ども」の像だ。爆風で衣服を剥ぎ取られた若い女性教師が、幼い教え子の遺体を抱いて空を睨んでいる。その台座には、次の歌が刻まれている。(写真:広島平和公園の「教師と子ども」像)

   大き骨は先生ならむ そのそばに 小さき あたまの骨 あつまれり(正田篠枝)
 
 歌の作者 正田篠枝(しょうだ しのえ)は35歳のとき、爆心地より1.7キロの広島市内の自宅で被爆。53歳のとき原爆症による乳がんと診断され、2年後の1965年6月15日、自宅で死去した。享年54歳。
 篠枝は原爆体験を短歌で綴った。はじめ彼女の師 杉浦翠子が主宰する『不死鳥』に39首が掲載され、後に私家版の歌集『ざんげ』に纏められた。この歌集は占領軍の厳しい監視・検閲の目をくぐり、広島刑務所でひそかに印刷、百部だけが発行された。この歌集には前掲の教師とこどもの歌のはかに、次のような作品が含まれていた。

   筏木の如くに浮かぶ死骸を 竿に鉤をつけ プスッとさしぬ
   炎なか くぐりぬけきて川に浮く 死骸に乗つかり 夜の明けを待つ
   ズロースもつけず黒焦の人は女(をみな)か 乳房たらして 泣きわめき行く
   酒あふり 酒あふりて死骸焼く    男のまなこ 涙に光る
   可憐なる学徒はいとし 瀕死のきはに名前を呼べば ハイッと答へぬ

 原爆忌が来るたびに鎮魂の、また平和希求の夥しい数の作品が発表される。例えば『短歌』八月号には、今春亡くなった竹山宏の作品が特集されている。彼は長崎原爆を体験し、兄を失っている。

   一分ときめてぬか俯す黙禱の「終り」といへば みな終るなり
   人に語ることならねども 混葬の火中に ひらきゆきしてのひら
   くろぐろと水満ち 水にうち合へる 死者満ちてわがとこしへの川

 原爆に関する詩歌ということになると、短歌がいちばん多いかもしれない。印象に残る有名歌人の作品を挙げてみる。

   原爆忌昏れて空地に干されゐし洋傘(こふもり)が風に ころがりま回る(塚本邦雄)
   アトミック・ボムの爆心地点にて はだかで石鹼剝いている夜(穂村 弘)
   燃え残り原爆ドームと呼ばれるもの残らなかった あまたを見せる(谷村はるか)

 俳句には原爆忌、長崎忌などの季語があり、多くの原爆関連作品が作られている。印象に残っている作品をアト・ランダムに挙げてみる。

   原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ(金子兜太)
   絵日記に幼な手の藍原爆忌(佐藤鬼房)
   広島や卵食ふ時口ひらく(西東三鬼)
   一房のぶだう浸せり原爆忌(原 裕)
   帆といふ帆沖にあつめて原爆忌(鷹羽狩行)

 ここに挙げたのは夥しい数の原爆関連作品のうちの、ほんの一部に過ぎない。しかし五行詩の村瀬以外は、いずれも当代を代表する歌人、俳人ばかり。作品のクォーリティーの高さは、さすがである。ただ、ここで正直な私の感想を述べると、各大家の作品よりも冒頭の正田篠枝の作品のほうが心の琴線に強く響いてくる。筏のように浮かぶ死体を竿の先に付けた鉤でプスッと刺して掻き集める―このような体験者にしか表現できない赤裸々な写実は、技巧的な心境描写、お手軽な原爆体験の風化論を寄せ付けない迫力で私に迫ってきた。偶々ではあるが、詩歌の本質を垣間見たような気がする。ポエジーの欠片も無い作品の横行にうんざりしていたときだけに、特にそうした想いが強いのかもしれないが…。

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