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酔芙蓉(スイフヨウ)咲く

           スイフヨウ朝
   始まりに終わりがありて酔芙蓉(杜詩夫)
   
   愛増も薄暮のなかに酔芙蓉( 〃 )

酔芙蓉が咲いた。この花は芙蓉の園芸種で、季語では同類として扱われている。朝白く咲いた花が次第に桃色に変わり、夕刻には赤く色づいて凋む。その様子が微薫を帯びた佳人に似ているというので、酔芙蓉と名付けられたらしい。一度凋んだ花は翌朝に再び開くことはなく、俗に謂う一日花である。園芸種の花はあまり好きではないが、この花だけは例外だ。この時季に咲く花のなかでは、いちばん好きだ。どこが好きと問われても困る。好きな女性について理由を訊かれているようなもの。化粧っ気の無い素顔、襟足、さっぱりした性格などと数え挙げても、所詮は好きなところの一部に過ぎない。酔芙蓉の場合も一日花の儚さ、白、ピンク、赤と変化する花の色、縮緬のような花弁の質感など好きな点いろいろあるが、いずれも強いて挙げれば…である。一口では旨く言えないが、やっぱり寂しげな雰囲気であろうか。

           酔芙蓉

 ところが韓国では、ムクゲを儚い花とは見ていないようだ。次々に新しい花を咲かす点に注目して、「無窮花」(ムグンファ)と呼んで国花としている。朝鮮という国名は毎朝、新鮮な花を付けるムクゲの意味だとする説もある。
『和漢三才図会』には別名として舜英(しゅんえい)を挙げている。これは中国最古の詩集『詩経』に「女あり。車を同じくす。顔は舜華(舜英のこと)の如し」<車に同乗した女性は槿のように艶美だった>とあり、それに拠るもの。舜は瞬と同義で、開花時間の短い花の意である。
 諺に「槿一朝の栄」があり、栄華の虚しさ儚さを表すとされている。それはそれで良いとしても出典が白楽天の「松樹千年終是朽 槿花一日自為栄」<松樹千年終(つい)に是れ朽ち、槿花一日自ら栄を為す>とする説には疑問がある。この詩は儚さを詠嘆したものではない。松は千年の齢を保つというけれども、ついには朽ち果てる時がくる。一方、槿(むくげ)の花は儚い命だというけれども、槿は槿なりに一日の栄を楽しんでいると訳すべきで、他人の境遇を羨まず己の分に安んずべきであると解すべきであろう。一茶はさすがで、白楽天の意に沿った句を遺している。

   それがしも其の日暮らしぞ花木槿(はなむくげ)(一茶)

 昨年だったか、松本清張賞を受賞した梶よう子の小説に『一朝の夢』がある。主人公の中根某は六十近い八丁堀の同心。才覚も目立たず風采も上がらない男で、唯一趣味が朝顔の栽培。周囲から"朝顔同心"と陰口をたたかれているような男だが、趣味が縁で宗観という武家と知り合ってから思いもよらぬ形で幕末の政争に巻き込まれることになる。ところでタイトルの『一朝の夢』は、明らかに「槿花一朝の夢」に拠っているのだが、これは梶よう子の勘違いと思われる。『類聚名義抄』(るいじゅみょうぎしょう)―これは紫式部が『源氏物語』を書いた11世紀はじめ頃の漢字辞典だが、これにはアサガオをムクゲの別称と書いてある。即ちムクゲをアサガオと呼ぶことはあっても、アサガオとムクゲは違うのである。

      風8

 酔芙蓉が咲くと、なぜか越中八尾の風の盆を思い出す。くだくだしく蘊蓄を並べてきたが、書きたかったのは、酔芙蓉に触発されて旅心が萌したということ。恥ずかしいが最後に演歌調の五行詩を二篇―来週からしばらく東京を離れます。残者なお厳しい昨今、皆さま どうぞ ご自愛を。

   散る前に    
   せめて一夜と
   赤く咲く
   越中八尾の
   酔芙蓉

   明日は咲かない  
   酔芙蓉
   今宵限りの逢う瀬なら
   燃えて死にます
   風の盆

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